12 災害にはゴミ問題がついてくる

2022年 12月15日

被害を受けるインフラ

 職場や家庭で災害に備えた備蓄と言って思い浮かべるものは何でしょうか。水、食糧、蓄電池、カセットコンロ、それに非常用トイレなどが挙げられることでしょう。これらは復旧までの間、生活を維持するために必要な品々です。では、なぜ生活を維持するためにこうした備蓄が必要なのでしょうか。それは停電や断水といった生活インフラが被害を受けて使用できなくなることを想定しているためです。仮に大地震が発生した際に、建物自体は免震・耐震がしっかりとなされていて持ちこたえたとして、その建物を起点に生き残る、復旧に取り組むとした場合、必要となる生活インフラにはどのようなものがありますか。
 このように考えた場合、案外と見落としがちな生活インフラが、ゴミ収集サービスです。今回のお話しは、このゴミ収集サービスが停止してしまったときのことについて考えてみます。

 普段生活をしていればゴミは出ます。家庭であれば、最も多いのは食べ物に関するゴミでしょう。食べ残しを出さないように気を付けていても、袋や食品トレイなどの包装用容器、お茶の出がらしや、魚の骨、果物などの種といった可食部以外の生ごみなどが出てきます。事業所であればそれぞれの業務に応じた廃棄物もありますが、書き損じや、郵送物の封筒など紙ごみも出てきます。私たちが生活するということは、ゴミを出し続けるということに他なりません。
 毎日ゴミを出し続けていても、事業所や自宅がゴミだらけにならないのは、ゴミ収集サービスがあるからです。しかし、大規模災害が発生すれば、ゴミ収集サービスだって停止する可能性があります。私たちはその可能性を考えつつ、災害へ備える必要があります。
 また、災害時には普段発生しないゴミが発生します。1つは、災害ゴミと呼ばれる、被災によって破損した家具、什器などです。大量の食器が破損することも考えられます。水害によって床上浸水となった場合は、畳やふすまなども災害ゴミとなります。ある調査結果では、通常1枚5㎏程度の畳が、吸水することで、12.5kgの重さになることが分かっています。水害に被災した世帯では、災害ゴミの総重量は1世帯あたり1トンを超えると計算されています。これはボランティアの力なども借りながら対処するしかありません。ただ、災害ゴミが大量に発生している家庭の場合は、その場所で継続的に生活を送ることがそもそも困難であると考えられ、被災後のしばらくは避難所での生活が続くことが想定されますので、今回の話題からは少し趣旨が外れます。
 もう1つの災害時特有のゴミについては、しっかりと考える必要がありそうです。それは下水道が使えないことによる、排泄物の処理ゴミです。水洗のトイレを流すことが出来ない折に使用するのが非常用トイレですから、結果的に使用済みの非常用トイレは、そのままゴミとして残ります。

 

ゴミ問題に対する備え

災害時のゴミ問題について、最も基本的な備えは、ずばりゴミ袋の備蓄です。ゴミ袋自体は大して場所を取るものでもありませんから、家庭であれば、30枚入りのパッケージを3袋程度ストックしておいても良いでしょう。別の機会に詳しくご紹介しますが、ゴミ袋は水嚢(すいのう)としてトイレの逆流防止や浸水対策にも活用することができます。
ゴミが大量に発生し、ゴミ収集サービスを利用して処分できない場合には、自分たちの手元にゴミを保管する必要があります。みなさんの職場や家庭の場合、その保管場所はどこでしょうか。いつもの場所では保管スペースが追い付かなくなる可能性があります。仕方なく戸建てなら勝手口の脇や、マンションであればベランダなどに一時的に保管することになるかもしれません。普段、ゴミを置く場所ではないところにゴミ袋を保管するわけですから、思いがけない突起でゴミ袋が破損し、中身がこぼれ出てしまうかもしれません。漏れ出した生ごみの液体によって床面に染みが残ってしまうことも考えられます。また、カラスの標的になる可能性もあります。
そのような事態を回避するためには、ブルーシートが手ごろな備蓄品として考えられます。大きいサイズのもので、床面からゴミ袋の上部までをくるむような用い方だと、ゴミ袋の重さによってブルーシートが風で飛ばされることを防げるかもしれません。ブルーシートはホームセンターや、ネットショップで安価に手に入ります。ゴミ袋と一緒に備蓄しておくと良いでしょう。

特にマンションに住んでおられる方や、しっかりとしたオフィスビルで清掃サービスが備わっている事業者などでは、普段使うことが無いために用意されていない資機材が箒や塵取といった掃除道具です。万が一ゴミ袋が破損し中身がこぼれてしまった時に、掃除機を使うわけにもいきませんし、かといって、手作業で片づけるのは大変な上に、気分の良い作業ではありません。短冊状に割いた新聞紙を湿らせて細かいゴミをからめとりながら箒で片づける、といった昔ながらの掃除のテクニックが災害時は活きてくるかもしれません。

 

ゴミに対処するちょっとした技術

平時であっても毎日取り扱っているゴミですから、毎日のゴミ処理が、すなわち災害時に備えたトレーニングであると考えることもできます。
今日からでも取り組んで頂きたいのが、ゴミ袋の口を結ぶ際に、中の空気をしっかりと抜くこと。ご案内のとおり、ビニルは比較的機密性が高いために、しっかりと口を結んでしまうと、中に入った空気は抜けづらくなります。空気を残した状態で口を結び、そのゴミ袋をストックしていくということは、言わば風船を積み上げていくようなもので、ゴミの保管場所ではスペースの無駄遣いとなります。また、後から結び目をほどいて空気を抜こうとすれば、内部で腐敗のすすんだ生ごみの臭いを浴びることになります。これはなかなかいやなものです。中の空気をしっかりと抜く、という「お作法」は、非常用トイレの処分についても同様のことがいえるでしょう。後から使用済みの非常用トイレの結び目をほどいて、というのは、ゴミ袋の空気抜きよりももっと嫌なものでしょう?

食事をすることで発生する生ごみなどは、腐敗によって悪臭を発生させます。都度都度、スーパーの買い物袋のような取っ手付きのビニル袋に入れて処分するのも方法の1つです。スーパーの買い物袋は図で示しているように、両方の把手に手を通し、反対側の把手を掴んで引っ張る、という簡単な方法でしっかりと口を閉じることができます。また、比較的ほどくのも簡単な点も特徴です。この結び方をしっかりと2回繰り返すだけで、そこそこの気密性が得られます。勿論、結びながら中の空気を抜くことをお忘れなく。
ゴミ袋の口をしっかりと結んでいるはずなのに、それでも生ごみの悪臭が発生しているような気がする場合には、酢を使って対処することができます。臭いを発しているゴミ袋の口を少しだけ開き、キッチンペーパーを入れ、そこに酢を数滴垂らしてから、ゴミ袋を再びしめておきます。悪臭の原因となっている生ごみのアルカリ性の腐敗と、酢の酸が反応して悪臭を消してくれます。

 

年末年始はゴミの防災訓練を

ゴミの収集廃棄を統括している環境省が発行している、一般廃棄物処理(つまりゴミ処理)の災害時の初動対応手引きによると、災害時のゴミ収集サービスの復旧は被災後3日と計画されています。3日なら大したことが無いように感じられるかもしれません。しかし、既にご紹介してきたように、災害時には普段よりも多くのゴミが発生する可能性もあります。また、何事も計画通りに運ぶとは限りません。3日で再開するはずが、復旧に1週間を要したとしても、災害時の出来事としては驚くには及ばないと言えるでしょう。
なお、実際に被災した場合、3日でゴミ収集サービスが復旧したとしても、ゴミの集積地は特定の箇所が指定されることもあります。いつも通りのゴミ収集場所にゴミ袋を積み上げても、誰も収集していってくれないということです。また、いつものゴミ収集場所にゴミ袋を積み上げることにより、通行上の障害となり、復旧活動を妨害することにつながる場合も考えられますので、被災後のゴミ収集に関しては、自治体の情報をしっかりと確認する必要があります。
さて、このように生活インフラの重要な1つである、ゴミ収集サービスが停止し、増大するゴミ袋と私たちがそれぞれに格闘しないといけない状況については、ゴミ袋の中の空気を抜いたり、袋が破けないように注意したりと、様々なテクニックを活用しつつ対処しなくてはなりません。これまでのコラムでご案内してきたように、災害への備えは、なによりも訓練が重要です。このゴミ問題についても、格好の訓練時期があります。
それが、年末年始です。筆者の住んでいる地域では、例年12月31日から1月3日までの4日間、ゴミ収集サービスがお休みになります。たかだか4日間ですが、曜日の取り合わせによっては、5日間、ゴミを自分で管理する必要が生じます。しかも、大晦日にまでもつれこんだ大掃除のゴミや、食べること以外に大してすることのない正月のさまざまな生ゴミが発生する時期でもあります。

一年の計は元旦にあり、肩ひじ張らずに日常生活の中で災害に対する備えを充実させていく毎日のスタートとして、年末年始にゴミ問題について少し考えてみてはどうでしょうか。

 

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