29 地震だ!避難所へ!は間違い?

2023年 09月01日

避難所と避難場所は違う

小学校の体育館などは、災害時に避難所となります。東日本大震災や熊本地震の折にも避難所暮らしの様子が報道された様子を記憶されている皆さんもいらっしゃることでしょう。避難所は地震だけでなく、豪雨・豪雪災害などの折には、ニュースで「明るいうちに早めの避難を!」などと呼びかける様子を見ることがあります。今回は、この避難所について考えてみましょう。
筆者が防災の講習をやっていると、多くの方が、災害が発生したらとにかく避難所へ、と考えていることに驚きます。驚くと言うほどですから、災害が発生したらとにかく避難所へ行く、という発生は正解ではありません。また、避難所と避難場所について区別がついていない方もいらっしゃいます。まずはこのあたりの整理から始めていきましょう。
避難所、避難場所、この二つは一字違いではありますが、内容は相当に違います。これらの根拠となる災害対策基本法では、避難所は正式には、指定避難所(第49条の7)と言い、避難場所は、指定緊急避難場所(第49条の4)と言います。一般的に災害時に避難した方々が身を寄せる体育館などは、避難所になります。一方、避難場所とは、主に広い公園などが該当します。指定避難所、指定緊急避難場所の名称が法律で定められたのは、2013年の災害対策基本法改正の時ですから、避難場所については、自治体ごとまちまちな「一時避難地」「緊急避難施設」「広域避難場所」などといった名称で呼ばれることがあります。

さて、避難所は、大規模な災害が起きて一旦落ち着くまでは家を離れて避難をしておいたほうが良い場合や、戻ろうにも家が被災して戻れない場合などに、一時的に身を寄せる場所を指します。避難場所は、土石流、河川の氾濫、あるいは、市街地火災の延焼などのように、その場に留まっていると死んでしまうかもしれない場合に緊急避難するための場所を指します。避難所と避難場所が兼用として指定されている場所もある場合がありますが、それは場所それぞれの指定です。皆さんの自宅の周りにどのような避難所と避難場所があるかは、一度確認しておくべきでしょう。

 

避難所は万能ではない

自宅が河川の流域で、いまにも豪雨のために浸水しそうだ、といった場合には早め早めの行動で避難所へ避難することが大切ですが、地震が発生して、むやみやたらに避難所へ向かうことの是非について少し考えてみましょう。
避難所への移動は、引っ越しではありませんから、非常用持出袋を背負って、着の身着のままで向かうことになる可能性が高いです。寒くても、備蓄の毛布が配布されるまで待たなくてはなりませんし、避難者全員に行き届くだけの十分な量があるかも分かりません。食事にしても同様ですし、少ないトイレには長蛇の列ができ、掃除が不十分なまま大勢の人が利用するためにとても汚れた状態かもしれません。プライバシーも殆どない状態になります。とにかく避難所には不自由がつきまといます。

そもそも、避難所は前章で紹介した通りに、災害によって自宅に戻れなくなった人が一時的に身を寄せるために用意されているものです。その地域に住んでいる人々が一斉に身を寄せることを想定しているわけではありません。だから、闇雲に住人が避難所に向かってしまうと、瞬く間に満杯状態になってしまうのです。ちなみに、避難所は自宅の状態と関係が深い施設ですから、原則的にその土地の在住者を対象としています。在学者や在勤者に向けて用意されているものではないという点にも注意が必要です。東日本大震災の折に、付近のオフィスビルからおそろいのヘルメットを被った会社員の方々が大挙して避難所にやってきた時には、これをどう差配したものか悩んだものだ、とは、ある小学校の校長先生の回想です。
どうしても避難所に向かうしかない状況になった場合のために用意しておくのが非常用持出袋ですが、この備えについては、プライバシーが希薄な状態の場所に行くことを念頭に置いておくことが必要です。最近は手軽に温めることのできる非常食が登場していますが、避難者が集まっている中で、1人だけ湯気の立つ(湯気が立つということは、おいしそうな匂いも湯気にのって広がります)非常食を食べるというのも、人間関係的には心苦しいものがあるでしょうし、子供のお気に入りだからといってやたらと音の出るおもちゃを持ち込むのも考えものです。非常用持出袋に携帯用トイレ(非常用トイレ)を入れている方がいますが、山中に籠もるわけでもあるまいし、一体どこで使うのでしょうか。

 

在宅避難のススメ

本当に緊急な危険が迫っている場合には、避難所への避難は早いに越したことがありませんが、近年、自治体も推奨しているのが、在宅避難です。当然、自宅や職場が重大な被害を受けていないことが前提となりますが、在宅避難は避難所暮らしよりもはるかに快適である可能性が高いと言えます。プライバシーは当然守られますし、着替えや寝具も十分にあります。食糧や水の備蓄がしっかりされていれば、しばらくの間は問題なく「籠城」できるはずです。
これが、発災となるや、すわ避難所と慌てずに、在宅避難を検討すべき理由になります。
とはいえ、倒壊の危険性があるにもかかわらず、在宅避難を続けるのは誤った選択です。ここでは、2つの簡単なチェック方法をご紹介しておきます。

1つは紐を使った方法です。タコ糸でもなんでも、1メートルの長さの手ごろな紐を用意します。この先に重りをつけて、建物の外壁の四隅で角にひもの上端を当てます。ひもの上端が壁の角についているわけですから、重りも当然壁についているはずです。これが垂直な状態であり、正常な状態です。重りが壁から離れれば、それは建物が傾いた可能性があることを示しています。1メートルの長さのひもの先の重りが壁から3センチ以上離れた場合、その建物は倒壊の可能性が高い状態です。急いで避難をしてください。
もう1つの方法は、建物に生じた亀裂を観察する方法です。壁の平面部に入った亀裂は、壁の化粧仕上げにヒビが入っただけかもしれませんし、それほど重要ではありません。ドア枠や窓枠の角、建物内部の角の部分に端を発する亀裂が入っている場合は、危険です。専門家(自治体には教育訓練を受けた一級建築士などのボランティアによる応急危険度判定員という専門家がいます)に判定をしてもらうまでは避難すべきでしょう。また、亀裂を見つけた場合には、チョークやマーカーで亀裂と直交するように線を引き、発見日時を近くに書いておく方法もあります。しばらくしてから再度観察した際に、引いた線がずれているようであれば、その建物は徐々にずれて、倒壊する危険があるというサインです。何も手がかりが無い状態や、写真を撮影しただけでは、微細なズレを発見することは非常に困難です。その点、目印をつけておけば、変化がよく分かります。
こうした紐やチョークも在宅避難のグッズとして備えておくべきでしょう。

 

分け合うのは体力

なんとか在宅避難で、被災後の生活をやりくりし始めた時にも注意点があります。隣近所の顔見知りも同様に在宅避難をしていたら、お互いに協力しあう機会も生じることでしょう。そんな時に、物のやりとりは原則的に避けた方が良いでしょう。あなたが知っている隣のAさんが困っているようだからと、備蓄の水を分けてあげたとします。Aさんは、悪気無く、あなたが水を分けてくれたことを、Aさんの知り合いのBさんに話しました。Bさんも水で困っていたさなか、あなたのところに行けば水を分けてもらえるかもしれないと思って、訪ねてくるかもしれません。玄関を開けたらあなたの知らないBさんが水を分けて欲しいと立っているわけです。あなたは、Aさんは知り合いだから分けてあげただけで、直接の知り合いでもないBさんに分ける必要はないと思うかもしれませんが、Bさんからしてみれば、Aさんには分けたくせに、もっと困っている俺にはなんで分けてくれないんだ、という反感を抱く原因になってしまうかもしれません。

災害はその土地に住んでいる人々に等しく襲い掛かります。災害後の生活も多少の差はあったとしても、皆が苦しんでいるときです。物のやり取りで余計な禍根を残すような助け合いは、あまりうまいやり方とは言えないでしょう(物を分け与えるのは絶対にダメ、と言っているわけではなく、本当に助けが必要な状況であれば、助けてあげることもまた大切です)。一方で、体力に余裕があるなら、労働で助け合うことのほうがベターかもしれません。もしあなたに体力の余裕があるならば、自分の家の前だけでなく、隣の家の前の片付けも手伝ってあげるとか、エレベーターの止まったマンションで荷物をもって上がるのを手伝ってあげるとか、一緒に出来る助け合いは大切です。みんなで一日も早い復旧を目指したいところです。

 

 

 

国士舘大学 防災・救急救助総合研究所 嘱託研究員     
公益社団法人 東京都理学療法士協会 スポーツ局 外部委員 
佐伯 潤 

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